食事誘発性肥満(DIO: Diet-Induced Obesity)モデルとは、マウスやラットなどの実験動物に、脂質比率を高めた「高脂肪食」を一定期間自由に摂取させることで作製する病態モデルです。
遺伝子操作を一切行わず、過栄養という後天的な環境要因によって肥満を導入するため、現代人の過食や不摂生による肥満のプロセスを忠実に再現できます。このモデルは、内臓脂肪の蓄積や体重増加だけでなく、高血糖、インスリン抵抗性、脂質異常症といった、人間の生活習慣病(メタボリックシンドローム)に酷似した病態を示すため、肥満症や代謝性疾患の治療薬開発、病態解明の研究に広く用いられています。
以下に、食事誘発性肥満モデルで主に研究対象となる疾患と、その利用方法を表形式でまとめます。
| 研究対象疾患 | モデルの利用方法 |
|---|---|
| 肥満 | 体脂肪蓄積メカニズムの解明、抗肥満薬の評価 |
| 2型糖尿病 | インスリン抵抗性の進行、高血糖の改善評価 |
| 脂質異常症 | コレステロールや中性脂肪の代謝異常 |
| 代謝関連脂肪性肝疾患(MASLD/MASH) | 肝臓への脂肪沈着と線維化 |
本レビューは、肥満研究に用いられる多様な動物モデルを体系的に整理し、遺伝子改変モデルと食事誘発性肥満モデル(DIO)を含む各手法の特徴を比較しています。特にエネルギーバランス、摂食行動、体重調節に関わる生理・分子機構の解析における有用性が強調されており、ヒト肥満との類似性や限界も議論されています。DIOモデルは環境要因に基づく肥満を再現できるモデルの一つとして重要とされています。
参照:Animal models of obesity Obesity Reviews(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/17316303/)
本レビューは、1型および2型糖尿病の研究に用いられる動物モデルを網羅的に解説し、それぞれの病態再現性や用途を整理しています。2型糖尿病では、肥満を伴うモデルや高脂肪食による誘導モデルが、インスリン抵抗性やβ細胞機能低下の解析に広く利用されます。薬効評価や病態進行の理解には複数モデルの併用が重要である点が指摘されています。
参照:The use of animal models in diabetes research British Journal of Pharmacology (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22352879/)
本レビューは、肥満研究における動物モデルとヒトとの脂肪組織生理の違いに焦点を当てています。脂肪分布や脂肪細胞機能、炎症応答などにおいて、マウスとヒトで異なる点があることを示し、結果の解釈には注意が必要と指摘しています。一方で、食事誘発性肥満モデルは脂肪組織の機能異常や代謝疾患の機序解明に有用であり、ヒト研究との統合的理解の重要性が論じられています。
参照:Of mice and men: considerations on adipose tissue physiology in animal models of obesity and human studies Metabolism Open(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36092796/)
本レビューは、1型および2型糖尿病に用いられる多様な動物モデルを整理し、それぞれの利点と限界を比較しています。遺伝子改変モデルに加え、高脂肪食による誘導モデルはヒトの生活習慣に近い病態を再現でき、インスリン抵抗性や代謝異常の解析に有用とされています。一方で、創傷治癒様式や生殖特性などヒトと異なる点もあり、モデル選択の重要性が指摘されています。
参照:Animal models for type 1 and type 2 diabetes: advantages and limitations Frontiers in Endocrinology (https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38444587/)
本モデルは、マウスのグルカゴン受容体(GCGR)遺伝子をヒト型に置換したヒト化マウスで、糖代謝や脂質代謝の評価に用いられます。高脂肪食による肥満(DIO)条件下でも血糖や体重、ホルモン変動を解析でき、抗GCGR抗体などの薬効評価に適した前臨床モデルです。(2026年5月18日調査)
| 製造・販売元 | Biocytogen |
|---|---|
| 分析項目 | 血糖値、インスリン、グルカゴン、脂質(TG・コレステロール)、耐糖能(IPGTT) |
| 主要エンドポイント | 体重変化、血糖コントロール、ホルモン変動、脂質代謝改善効果 |
参照:Biocytogen(https://biocytogen.jp/gene-humanized-models/b-hgcgr-mice)
本製品は、日本クレア株式会社が提供する高脂肪飼料で、脂肪由来エネルギー比が約60%の超高脂肪設計が特徴です。ペレット化により取り扱いやすく、長期給与で内臓脂肪蓄積や代謝異常を誘導できるため、食事誘発性肥満(DIO)や糖尿病モデル作製に広く利用されます。(2026年5月18日調査)
| 製造・販売元 | 日本クレア株式会社 |
|---|---|
| 分析項目 | 体重、摂餌量、血糖値、耐糖能(OGTT)、インスリン感受性、血中脂質、臓器重量 |
| 主要エンドポイント | 体重増加、内臓脂肪蓄積、インスリン抵抗性、高血糖、脂質代謝異常 |
参照:日本クレア株式会社(https://www.clea-japan.com/products/general_diet/item_d0080)
食事誘発性肥満モデルは、高脂肪食によりヒトに近い肥満や代謝異常を再現する実験系で、肥満・糖尿病・脂質異常症・脂肪肝の研究に広く用いられます。ヒト化マウスや高脂肪飼料と組み合わせることで、病態解析や薬効評価に有用な前臨床モデルとして活用されています。
非臨床試験においては、目的に応じた信頼性の高い病態モデルの選定が結果の妥当性を左右するため、適切なモデル選択が重要です。以下のページでは非臨床試験で利用される病態モデルを一覧で紹介しています。参考にしてください。
非臨床試験で利用される病態モデル一覧新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。