非臨床試験で用いられる組織透明化技術にはCUBICやiDISCOなどがあります。本記事では、これらの技術が非臨床試験において求められる背景や主要な手法と特長、具体的な活用事例などについてまとめています。
非臨床試験では、CUBIC(キュービック)などをはじめとする組織透明化技術が求められます。これは、従来の病理評価(薄切切片)を用いた場合、複雑な神経ネットワークや血管の走行、微小ながん転移といった「全体像」の把握が難しく、重要な情報の欠落が発生するリスクがあるためです。
そこで組織透明化技術を用いて組織を透明化し、ライトシート顕微鏡などで撮影することによって、臓器を壊さずに3次元構造の可視化や定量化を行えます。
CUBIC(キュービック)は、日本で開発された高度な透明化技術です。臓器全体または全身のすべての細胞を観察対象とし、組織を脱脂および屈折率の調整を行って透明化を行い、深部まで観察を可能とします。全脳や全身の解析において高い再現性を持つ点を特徴としています。
CLARITYは、アクリルアミドベースのハイドロゲルを用いて組織を透明化する技術です。ハイドロゲル固定により透明化に時間を要しますが、内因性蛍光や微細構造を保持した状態での脂質除去が可能であり、複数回の染色にも向いています。また、iDISCOの場合は有機溶剤を使用して広範な組織を迅速に透明化ができ、交代浸透性に優れます。
ただし、いずれも透明化の過程において資料の変化が発生するケースがあるため、観察したい標的などに合わせて選択することが推奨されます。
組織透明化後のイメージング技術では、厚い試料の内部構造を切片化せずに3Dで可視化します。特にライトシート顕微鏡(LSFM)は、透明化した大型サンプル全体を短時間で撮影するのに有効です。
理科学研究所が開発したCUBIC技術は、脳全体における遺伝子の働きやネットワーク構造について3次元データを取得し、サンプル間で定量的に比較するための基盤技術です。この技術によって成体のマウス、小型サルの脳の透明化を行い、1細胞解像度で観察することに成功しています。
このCUBICを応用し、異なる条件における脳の活動状態を比較できるかどうかをテストした結果、光により活動する脳領域を全脳レベルで網羅的に同定することに成功。さらに、3次元的な免疫染色や神経細胞の微細な構造の観察にも利用できることを示しました。
こちらの研究では、ヒト肺上皮細胞から作成した3D肺オルガノイドを透過光でモニタリングした後に染色し、自動共焦点イメージングを用いてMatrigel越しに撮像しています。高度な画像解析を行うことによって、オルガノイドの3D再構成や細胞形態、生存性、分化マーカーの複雑な解析が可能となり、疾患表現型や化合物の影響を研究するために使用できる複数の定量的指標について特徴付けています。また、肺毒性を引き起こすとされている複数の薬剤の濃度依存的な影響について測定を行っています。
CUBIC技術により臓器全体を透明化し、3次元的にイメージングする手法について紹介されています。従来使用されてきた2D切片では難しかった臓器全体の情報を可視化し、薬物動態や毒性評価などに役立てるという内容となっています。
組織透明化解析を行う際には、まずはサンプルの固定により形態を保持し、続いて脱脂や色素除去によって光散乱を減らしていきます。その後、試薬を使用して透明化を行い、必要に応じて抗体染色などを行って標的の可視化を行います。最後に、ライトシート顕微鏡などでイメージングを行い、3次元画像を取得して画像解析を行っていきます。
透明化サンプルの3次元画像は非常に容量が大きく、1件でテラバイト級の大きさになることもあります。そのため、保存容量が問題になることはもちろんですが、転送速度やバックアップ、アクセス権限、解析用GPU環境まで含んだIT基盤が重要になってきます。データの管理環境が十分でない場合、撮像後の解析が滞ってしまい、効率が大きく落ちる可能性があります。
組織透明化技術を用いる場合には、高額な設備投資や専門知識が求められます。自社で全てを賄うと負担が大きくなるため、高度な技術を持っている専門CRO(受託解析サービス)を活用することによって、設備面などを含めたコストを抑えながら、質の高い解析を短期間で進めやすくなります。結果として、開発・研究におけるスピード向上も期待できます。
組織透明化技術は、AI解析と組み合わせる形での活用が行われています。機械学習や深層学習(ディープラーニング)を用いた細胞カウントや、3次元的な構造抽出の効率化につながっていきます。また、動物モデルによって得られた詳細な3D解析データを臨床試験の予測性向上に繋げることによって、トランスレーショナルリサーチへ寄与することができると考えられます。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。