現在、がん治療の柱として免疫チェックポイント阻害薬やCAR-T細胞療法などの「がん免疫療法」が用いられています。この点から、創薬スクリーニングの過程において、候補化合物がどのように免疫細胞を活性させるのか、がん細胞の免疫逃避機構をいかに阻害するかを評価するin vitroモデル(がん免疫アッセイ)が不可欠といえます。適切なアッセイ(評価系)の構築は、臨床試験への移行判断や開発の成功率に影響する、非常に重要なプロセスです。
T細胞やNK細胞といったエフェクター細胞が、がん細胞を直接攻撃して死滅させる能力を測定する手法を「キリングアッセイ(細胞傷害性試験)」といいます。従来は細胞死に伴って酵素を計るLDHアッセイなどが用いられることが一般的だったものの、近年ではフローサイトメトリーやリアルタイム細胞解析システムでのモニタリングが用いられることが主流となっています。
「ADCC/CDCアッセイ(抗体依存性・補体依存性細胞傷害)」は、主に抗体医薬品の薬効評価に用いられている手法です。ADCCとCDCはいずれも、体内に入った抗体ががん細胞やウイルス感染細胞などの標的細胞を破壊する免疫メカニズムです。ただ、ADCCはNK細胞やマクロファージが攻撃を行う、CDCは血液のタンパク質(補体)が抗体に結合することにより破壊を行うといった違いがあります。
また、レポーターアッセイは生物学的な応答を簡便に測定するための方法として使用されています。ここで利用できるレポーター遺伝子にはさまざまなものがありますが、その中のひとつであるルシフェラーゼは発光量の測定により検出できる、定量性・感度が高く、広いダイナミックレンジを持った生物発光レポーターアッセイの構築に用いられているものです。
免疫細胞が活性化した際に放出されるタンパク質(サイトカインなど)の量を測定し、免疫の状態や炎症反応について評価を行う方法です。代表的な手法としては、サンプル内の抗原を定量的に検出するELISA法(酵素結合免疫吸着測定法)、単一細胞レベルで細胞の分泌活性を検出するELISPOT(酵素免疫スポット)法、複数の標的分子を同時に測定できるマルチプレックスアッセイなどの方法があります。
PD-1/PD-L1などの「免疫のブレーキ」となる分子の発現や機能について評価を行う手法です。がん細胞が免疫から逃れる経路をブロックできるかを確認するため、Binding Assay(結合アッセイ)を用いることによって、開発を行っている抗体医薬品がどの程度標的分子間の結合を阻害するかを測定します。
従来用いられてきた平面的(2D)な細胞培養においては、複雑な腫瘍微小環境(TME)の再現が困難である、という大きな課題がありました。しかし現在は患者由来がんオルガノイド(PDO)などの立体的な3Dモデルと、免疫細胞の共培養によって生体内に近い環境での評価が可能になっているため、薬効予測精度が向上しています。
近年では、AIをベースとした画像解析や、ハイコンテンツスクリーニング(HCS)の導入が進められています。このことにより、3D画像を用いて経時的に追跡し、細胞形態の微細な変化やアポトーシス(細胞死)について定量的かつ迅速に解析することが可能となります。以上から、膨大な候補化合物の中から有望な薬剤をスクリーニングする際の効率が向上することが期待できます。
自社でがん免疫アッセイを構築するには、初代培養細胞(PBMC等)の安定的な調製、ドナー間の個体差の制御、共培養条件の最適化など、高い専門ノウハウが必要となります。さらに、リアルタイム細胞解析装置や3Dイメージング機器などの高度な専門機器を導入・維持するためのコストも大きくなるため、製薬企業や研究機関にとって大きなハードルになっているといった現状があります。
腫瘍免疫学に特化したCROに試験を委託することによって、前述の課題の解決に繋げられます。専門家による安定した試験の実施に加えて、最新機器の使用による精緻なデータ取得が可能となります。その結果として研究者がリード化合物の選定をはじめとするコア業務に集中できるようになり、創薬が加速するといったメリットを得られます。
今後は単純にがん細胞を殺すだけではなく、周囲の血管やMDSC、Tregなどの免疫抑制細胞を含む「腫瘍微小環境(TME)の複雑な再現」が可能な、より生体に近い3D複雑共培養モデルを用いたアッセイが主流となっていくと考えられます。
また、患者由来のオルガノイド(PDO)を用いたアッセイが普及することによって、臨床試験の前に患者の薬剤応答を予測し、それぞれに合った治療方法の選択や耐性予測を行う「個別化医療(プレシジョン・メディシン)」への貢献が期待されています。
そして日進月歩で進化していく高度ながん免疫アッセイに対応するには、自社でゼロから立ち上げるのではなく、専門的な技術力と豊富な実績を持つ「CROへの外部委託」を積極的に活用することがポイントといえます。この点が、新薬の開発を成功させるための標準的な戦略になっていくと予想されます。
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