本記事では、単回投与毒性試験(急性毒性)の重要性や評価項目、反復投与毒性試験との違いなどについて解説を行っています。
単回投与毒性試験(急性毒性試験)とは、医薬品候補物質などを動物に1回のみ投与し、短期間(通常14日間)で生じる毒性反応や致死性を調べる非臨床試験です。この試験の主な目的は、致死量や最大用量(MTD)の推定、および標的となる臓器の特定です。試験を行うことによって、ヒトが過量摂取した際の予測や、労働安全衛生における基礎資料として活用されます。
試験期間中に、動物の一般状態(行動、体重変化、摂取量など)を詳細に観察し、毒性症状の発現から回復、または死亡に至るまでのタイミングを正確に記録します。試験が終了した後には剖検(病理解剖)を行い、さらに病理組織学的検査を通じ、その物質がどの臓器に対して毒性を示したのか(標的臓器)の特定を行います。この時に得られるデータは、次段階の試験において、重要な監視指標となります。
かつて行われていた急性毒性試験の場合、半数致死量(LD50)の厳密な算出が求められていました。しかし、現在は動物福祉(3R)の観点が重視されており、必要最低限の動物数で試験を実施し、致死に至るおおよその用量を示す「概略の致死量(ALD)」や、死亡せずに毒性が許容される「最大耐量(MTD)」を推定する方法が主流となっています。
それぞれの試験では、投与条件と評価対象が異なります。単回投与毒性試験では、物質を1回のみ投与し、主に約2週間の急性的な毒性反応や致死性について、短期間で評価を行います。対して反復投与毒性試験の場合は、数週間から数ヶ月(ケースによってはそれ以上の期間)にわたり、毎日連続して投与を行い、蓄積性や慢性的な毒性などを評価する、といった違いがあります。
単回投与毒性試験は、その試験単体で安全性を証明するのではなく、次に行う反復投与毒性試験を適切に行うための橋渡し役となります。単回投与試験によって得られた最大耐量や毒性データは、その後の反復投与毒性試験における投与量の設定(高・中・低用量の決定)において不可欠な根拠となります。
試験デザインにおいては、ヒトへの外挿性を高めるための工夫が求められます。例えば動物種の選定においては、マウスやラットなどのげっ歯類に加えて、イヌやサルなどの非げっ歯類を含めた2種類以上の動物種を用いることが推奨されています。また投与経路は、将来的にヒトの臨床試験で予定している経路(経口・静脈内・経皮など)を設定し、実践に即したデータの取得を行うことが重要となります。
新薬の医薬品承認申請(IND/NDA)を行うには、各国の規制当局が定める基準を満たす必要があります。日本においては、PMDA(医薬品医療機器総合機構)のガイドラインや、日米欧が合意したICH(医薬品規制調和国際会議)ガイドラインに準拠して試験を行っていくことが求められています。この点から、国際的に通用するデータを揃える必要があります。
試験を外部のCROに委託する際には、規制当局による厳しい審査(査察)を受けるため、試験が「GLP(優良試験所基準)」に完全準拠しているかどうかが絶対条件となります。この部分については、過去の査察における履歴や、データの信頼性を担保する信頼性保証部門(QAU)の機能性を確認し、高い品質管理体制を維持しているかを確認することが重要であるといえます。
現在行われている試験では、動物実験における3R(代替、削減、苦痛の軽減)への配慮が不可欠となります。この点から、少ない動物数で最大限のデータを引き出すための試験デザインを提案できるCROが求められます。AAALAC(国際実験動物ケア評価認証協会)の完全認証を取得しているかなど、動物福祉への意識の高さと、ガイドラインに沿った柔軟なコンサルティング力が、CROを選ぶ際の大きなポイントとなります。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。