優れた薬理活性を持っている候補物質だったとしても、それが生体内で適切に吸収・分布・代謝・排泄されない場合には医薬品になり得ません。本記事で紹介する非臨床における動態試験(ADME評価)は、有効性と安全性を担保するための重要なプロセスであるといえます。
生体内での薬物の動き「吸収(Absorption)」「分布(Distribution)」「代謝(Metabolism)」「排泄(Excretion)」の頭文字をとって「ADME(アドメ)」と呼びます。以下にてそれぞれのプロセスについて解説します。
薬物の「吸収」とは、投与部位(消化管など)から、血液中に移行するプロセスです。非臨床の吸収試験においては、「薬物がどれくらい速く、どれくらいの量が血流に乗るか」という点を確認することが目的となります。この部分が不十分である場合には薬効が得られないため、吸収速度や血中濃度の推移を正確に評価することは、後続の試験計画を立てる上で非常に重要であるといえます。
「分布」とは、血中に入った薬物が、血液の流れに乗って全身の組織や臓器に移行していくプロセスを指します。この試験は、薬効を発揮するための標的組織へ薬物が十分に到達しているかの確認に加えて、特定の臓器に過剰に蓄積していないか、といった点を調べることが目的となります。意図しない臓器に蓄積するといったことがないように、全身への分布状況について、定量的かつ視覚的な把握が欠かせません。
「代謝」は、薬物が体内でその構造を変えられるプロセスです。主に肝臓などに存在する代謝酵素の働きにより、元の薬物が別の物質(代謝物)に変換され、排泄されやすい形になります。ここでは、代謝酵素(CYPなど)の阻害や誘導を調査することが非常に重要です。このプロセスにより、他の薬剤と併用した際に生じる「薬物相互作用」のリスクを予測し、安全性を担保するという役割を担っています。
「排泄」は、薬物そのものや代謝により生成された代謝物が、最終的に腎臓(尿)や肝臓(胆汁)を通じて、体外に排出されるプロセスです。この試験では、「どの経路から、どれくらいのスピードで体内から消失するか」を特定する目的を持っています。体内から速やかに排泄されるのか、または長く留まるのかを把握することによって、臨床における適切な投与量や投与する間隔を設定する重要な判断材料になります。
以下に、試験から得られる主要な動態パラメータを示します。このように、試験を通じて得られるデータが、のちの臨床試験における投与計画の根拠となります。
| バイオアベイラビリティ(F) | 投与量に対して、未変化体のまま全身循環血に到達した割合。経口吸収性の良否を示す |
|---|---|
| 分布容積(Vd) | 体内の薬物総量と血中濃度の比。数値が大きいほど、薬物が血液中にとどまらず組織へ広く移行していることを示す |
| クリアランス(CL) | 単位時間あたりに血中から薬物が完全に除去される血液の容積。代謝と排泄による消失能力の総合指標 |
| 半減期(T1/2) | 血中濃度が半分になるまでに要する時間。投与間隔(1日1回か、2回かなど)を決定する目安 |
動態試験を行う上で、評価を行うには高度な分析技術が必要となります。そこで専門のCROを活用するメリットを解説します。
非臨床の動態評価には、生体試料内のごく微量な薬物濃度を正確に測るために、LC-MS/MSなどの高感度な分析機器と、それを扱う熟練の技術が求められます。専門のCROの活用で、自社でゼロから分析系を立ち上げる時間とコストを大幅に省くことができ、迅速かつ信頼性の高いデータの取得を実現できるため、開発のスピードアップにつながっていきます。
非臨床試験を行う際には、国際的な基準であるICHなど各種ガイドラインに沿って実施する必要があります。経験豊富なCROを活用することによって得られるメリットとして、単なる分析の代行を行うだけではなく、最新の規制要件を踏まえた包括的なサポートが得られる点が挙げられます。また、試験計画におけるコンサルティングや、目的の薬物に適した動物種の選択など、CROによるサポートが試験を進める上で非常に有効であるといえます。
非臨床におけるADME試験は、リード化合物が「薬としての適格性」を備えているかを判断する生命線です。開発の早期段階において、体内での薬物の挙動を正確に把握することによって、その後の試験におけるドロップアウトのリスクを軽減できます。さらに、高度な専門性が求められる試験であるため、自社のニーズに合ったCROを選定・活用することがプロジェクト成功の鍵となります。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。
特許技術による新規モデル作製(特に肝疾患・線維化)や未知の病態モデルの作成など、多彩な自社疾患モデルを保有しているのが特徴。
探索から臨床を見据えた、薬効評価プランを個別設計が行えます。
「STAM™マウス」という特許モデルを保有しており、ヒトのMASH/NASHからHCCに類似した経過を示し、病態進展が20週齢時の肝癌を発症させることが可能。
2週間程度で、間質性線維症や尿細管変性、さらに炎症細胞浸潤を含む多重の病態が現れることから、抗線維化薬の初期スクリーニングモデルとして有用です。
現時点で存在しない疾患でも、独自の病態モデル開発が可能。クライアントの創薬ターゲットに合わせて、新しい病態モデルの提案をします。
国際規制に対応したGLP試験体制のもと、発がん性等の長期毒性からFIHに向けた毒性・TK・安全性薬理試験まで一括受託。ICH準拠の確実なデータで、グローバル創薬のコストと手戻りリスクを削減します。
SEG I–III(生殖発生毒性)や2年間の発がん性試験をはじめ、長期間にわたる複雑な毒性評価にも対応可能です。
初回ヒト投与(FIH)をまでを見据えた、毒性・TK(毒性動態)・安全性薬理試験までを一括で設計・受託することができます。
FDA・EMA・PMDAなどの国際規制に対応したGLP試験体制を完備。ICHガイドラインに準拠した信頼性の高いデータを取得し、グローバルな申請を見据えた試験設計を提案します。
PXBマウスを用いたヒト外挿性の高い薬物動態・肝代謝評価と、LC-MS/MSによる高感度バイオアナリシスを提供。動態・肝毒性・安全性の統合評価体制で核酸医薬等の新モダリティにも対応します。
ヒト肝細胞を有するPXBマウス®を用いた薬物動態・肝代謝評価に対応。
ADMEや薬物相互作用においてヒト外挿性の極めて高いデータを取得でき、臨床試への移行をサポートします。
LC-MS/MSを活用した高感度なバイオアナリシスを提供。微量な血中濃度測定から、複雑な代謝物の同定、厳密な定量バリデーションまでを一貫対応します。
薬物動態・肝毒性・安全性の統合評価体制を構築し、核酸医薬等の新モダリティにも対応。肝代謝が課題となる化合物や臨床導出が控える案件でも、定量性と再現性に優れた信頼性の高いデータを提供。