創薬モダリティとは、医薬品の作用機序や構造・製造技術に基づく治療手段の分類です。近年は技術革新によりモダリティが多様化しており、それぞれで有効性や安全性を評価するために必要な試験・評価項目も異なります。本記事では、代表的な創薬モダリティの種類を一覧で紹介します。
創薬モダリティとは、病気の原因に対してどのような手段で作用するかを表す「治療・攻撃方法」のことです。例えば、がん治療では細胞増殖に関わるHER2を標的とする場合でも、その攻撃手段はさまざまです。トラスツズマブはHER2に結合して増殖シグナルを阻害し、ペルツズマブはHER2が他の受容体と結合するのを防ぐことで増殖を抑制します。このように、同じ標的(HER2)を狙っていても、作用の仕組みや治療手段が異なれば、それぞれ異なる創薬モダリティに分類されます。
創薬モダリティは、新たな創薬課題を解決するために進化・多様化してきました。初期の低分子医薬では標的にできないタンパク質が存在したため、特定の標的を高い精度で認識できる抗体医薬が登場しました。しかし、抗体は細胞内の標的には作用しにくいため、標的タンパク質を分解するPROTACが開発されました。さらに、タンパク質ではなくRNAそのものを標的としたいというニーズから核酸医薬も実用化されています。新しいモダリティは既存技術では対応できない課題を克服するために生まれています。
| モダリティ | 特徴 | 主な非臨床評価 |
|---|---|---|
| 低分子医薬 | 細胞内標的に作用しやすく、経口投与しやすい | 薬物動態・薬効薬理・安全性 |
| 抗体医薬 | 高い特異性で細胞外標的に作用する | ADA・薬効薬理・薬物動態 |
| 核酸医薬 | RNA発現を制御する | 組織分布・薬物動態・安全性 |
| ペプチド・中分子医薬 | 低分子と抗体の中間的な特徴を持つ | 安定性・薬物動態・薬効薬理 |
| 細胞・遺伝子治療 | 細胞や遺伝子そのものを治療に利用する | 薬効薬理・免疫評価・安全性 |
| 再生医療 | 細胞・組織の再生を目的とする | 病態モデル・薬効薬理・安全性 |
低分子医薬は、分子量が小さく細胞内標的にも作用しやすいことが特徴のモダリティです。経口投与が可能な製剤が多く、製造コストを比較的抑えられるため、幅広い疾患で使用されています。一方で、標的以外にも作用しやすく、副作用や薬剤耐性の発現が課題となる場合があります。
必要な非臨床評価
低分子医薬では、薬剤が標的組織へ十分に届くか(薬物動態)、標的タンパク質へ結合して期待どおりの薬効を示すか(Target Engagement)、安全性に問題がないかを評価します。代表的な試験として、薬物動態試験、腫瘍内分布解析、Target Engagement評価、安全性薬理試験などが実施されます。
抗体医薬は、標的分子に対する高い特異性を持ち、正常細胞への影響を抑えながら作用できることが特徴のモダリティです。主に細胞外の標的分子へ作用し、高い治療効果が期待されます。一方で、注射製剤が中心であることや、製造コストの高さ、免疫原性への配慮が課題となります。
必要な非臨床評価
抗体医薬では、標的分子へ確実に結合して薬効を発揮するか(Target Engagement)、体内で適切に分布・維持されるか(薬物動態)、免疫反応や安全性に問題がないかを評価します。代表的な評価には、Target Engagement評価、ADA(抗薬物抗体)評価、組織分布解析、安全性試験などがあります。
核酸医薬は、DNAやRNAを標的として遺伝子の発現を制御できることが特徴のモダリティです。従来の低分子医薬や抗体医薬では標的化が難しかった分子にも作用できるため、新たな治療法として期待されています。一方で、体内で分解されやすいことから、標的組織へ効率よく送達する技術(DDS)の開発が重要な課題です。
必要な非臨床評価
核酸医薬では、目的の組織や細胞へ十分に送達されるか(組織分布)、標的RNAを適切に制御できるか(Target Engagement)、安全性や免疫刺激性に問題がないかを評価します。代表的な評価には、組織分布解析、遺伝子発現解析、Target Engagement評価、安全性試験などがあります。
ペプチド・中分子医薬は、低分子医薬と抗体医薬の中間的な特徴を持ち、高い標的選択性と優れた作用を両立できるモダリティです。低分子医薬では標的化が難しい分子にも作用しやすく、新たな創薬手段として注目されています。一方で、体内で分解されやすいことや経口投与が難しい場合があるため、製剤設計や送達技術の工夫が求められます。
必要な非臨床評価
ペプチド・中分子医薬では、体内で十分な安定性を維持できるか(安定性評価)、標的へ到達して薬効を発揮するか(薬物動態・薬効薬理)、安全性に問題がないかを評価します。代表的な評価には、血中安定性試験、薬物動態試験、薬効薬理試験、安全性試験などがあります。
細胞・遺伝子治療は、患者自身や提供された細胞、あるいは遺伝子を利用して根本的な治療を目指すモダリティです。従来の薬剤では治療が難しかった疾患への応用が期待されており、特にがんや遺伝性疾患の分野で実用化が進んでいます。一方で、製造工程が複雑で品質管理や長期的な安全性評価が重要となります。
必要な非臨床評価
細胞・遺伝子治療では、治療細胞が標的へ適切に到達して十分な効果を発揮するか(薬効薬理)、体内で長期間安全に機能するか、安全性や免疫反応に問題がないかを評価します。代表的な評価には、薬効薬理試験、生体内分布解析、免疫学的評価、安全性試験などがあります。
再生医療は、細胞や組織を利用して損傷した臓器や組織の機能回復を目指すモダリティです。従来の薬物療法では治療が難しかった疾患への新たな選択肢として期待されており、眼科や整形外科、循環器など幅広い分野で研究・実用化が進んでいます。一方で、細胞品質の管理や長期的な有効性・安全性の評価が重要です。
必要な非臨床評価
再生医療では、移植した細胞や組織が目的部位で生着・機能するか(薬効薬理)、適切に分化・増殖するか、安全性に問題がないかを評価します。代表的な評価には、病態モデルを用いた薬効薬理試験、生着・分化評価、腫瘍形成性評価、安全性試験などがあります。
創薬モダリティとは、病気に対する治療アプローチを分類したものであり、近年は低分子医薬だけでなく、抗体医薬や核酸医薬、細胞・遺伝子治療、再生医療など多様なモダリティが実用化されています。それぞれで作用機序や体内での挙動が異なるため、必要となる非臨床評価や試験項目も異なります。適切な評価を行うには、各モダリティの特性を理解し、専門的な知見や評価技術を備えたCROを選定することが、医薬品開発を円滑に進める重要なポイントとなります。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。