アンチセンス核酸(ASO:Antisense Oligonucleotide)は、標的RNAに相補的に結合し、遺伝子発現やスプライシングを制御する核酸医薬です。作用機序には、RNase Hを介して標的RNAを分解するRNase H誘導型や、スプライシングを調節して目的のRNAを産生させるスプライシング制御型など複数のタイプがあります。近年は神経疾患や希少疾患を中心に実用化が進んでおり、従来の低分子医薬や抗体医薬では対応が難しい標的に対する新たな治療法として期待されています。
スピンラザ(ヌシネルセン)は、SMN2遺伝子のスプライシングを制御するスプライシング制御型ASOです。SMNタンパク質の産生を促進することで、脊髄性筋萎縮症(SMA)の病態改善を目指します。ASO医薬の代表例として知られ、神経疾患領域における核酸医薬の実用化を大きく前進させた治療薬です。
テグセディ(イノテルセン)は、TTR mRNAを標的としてRNase Hを介した分解を誘導するRNase H誘導型ASOです。標的mRNAを分解してトランスサイレチン(TTR)タンパク質の産生を抑制することで治療効果を発揮します。RNase H型ASOの代表例として知られ、ASOの作用機序を示す代表的な治療薬です。
ウェイリブラン(ミプマーセン)は、ApoB mRNAを標的として発現を抑制するアンチセンス核酸(ASO)です。アポリポタンパク質Bの産生を低下させることで脂質代謝を改善し、脂質代謝疾患を対象に開発・実用化されました。初期のASO創薬を代表する治療薬の一つとして位置付けられています。
ASOは単独では細胞内へ取り込まれにくく、標的臓器へ効率よく送達できるかが薬効を左右する重要な課題です。化学修飾による安定性向上に加え、DDS技術を活用して体内動態や細胞内移行を最適化することで、標的RNAへの作用効率や治療効果の向上が期待されています。
ASOはRNase H誘導型とスプライシング制御型で適切な薬効評価法が異なるため、作用機序に応じた評価が重要です。標的RNAやタンパク質発現量に加え、関連するバイオマーカーを組み合わせて効果を確認します。また、患者ごとの遺伝的背景や病態の違いによる薬効のばらつきも考慮する必要があります。
ASO開発では、肝毒性や腎毒性、免疫刺激を含む安全性をヒトで予測することが重要な課題です。長期投与による影響やヒト外挿性には限界があるため、病態モデルを活用した安全性評価と臨床データを組み合わせ、より信頼性の高い評価系の構築が求められています。
標的組織へのデリバリー評価は、核酸医薬が目的の組織へ十分に到達し薬効を発揮できるかを確認するために重要です。組織内分布や体内分布を解析するとともに、PK評価を組み合わせることで薬物動態を把握します。また、化学修飾による分布変化も評価し、送達効率と薬効との関係を明らかにします。
RNA発現と薬効の評価では、Target Engagementを起点に複数の指標を組み合わせて効果を総合的に判断することが重要です。mRNA発現解析やタンパク質発現解析、バイオマーカーに加え、薬効薬理試験を実施することで、標的制御から生理機能改善まで一貫した薬効を確認できます。
ヒト外挿性を高めるため、オルガノイドやiPS細胞、患者由来モデル、ヒト化マウスを組み合わせた評価が活用されています。それぞれ再現できる病態や評価項目が異なるため、複数の病態モデルを組み合わせることで、非臨床段階から臨床での有効性や安全性をより適切に予測できます。
核酸医薬では、肝毒性や腎毒性、免疫刺激、オフターゲット作用を含めた安全性を多面的に評価することが求められます。さらに、長期投与時の影響も確認し、各種安全性試験を組み合わせることで、臨床で想定されるリスクをより適切に把握できます。
アンチセンス核酸(ASO)とは、標的RNAを制御することで新たな治療法を実現する核酸医薬です。その開発には、デリバリー、薬効、安全性を一貫して評価できる非臨床試験が求められます。今後の可能性を最大限に引き出すためには、開発戦略に応じた評価系を提案できるCROを選定することが成功への鍵となります。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。
特許技術による新規モデル作製(特に肝疾患・線維化)や未知の病態モデルの作成など、多彩な自社疾患モデルを保有しているのが特徴。
探索から臨床を見据えた、薬効評価プランを個別設計が行えます。
「STAM™マウス」という特許モデルを保有しており、ヒトのMASH/NASHからHCCに類似した経過を示し、病態進展が20週齢時の肝癌を発症させることが可能。
2週間程度で、間質性線維症や尿細管変性、さらに炎症細胞浸潤を含む多重の病態が現れることから、抗線維化薬の初期スクリーニングモデルとして有用です。
現時点で存在しない疾患でも、独自の病態モデル開発が可能。クライアントの創薬ターゲットに合わせて、新しい病態モデルの提案をします。
国際規制に対応したGLP試験体制のもと、発がん性等の長期毒性からFIHに向けた毒性・TK・安全性薬理試験まで一括受託。ICH準拠の確実なデータで、グローバル創薬のコストと手戻りリスクを削減します。
SEG I–III(生殖発生毒性)や2年間の発がん性試験をはじめ、長期間にわたる複雑な毒性評価にも対応可能です。
初回ヒト投与(FIH)をまでを見据えた、毒性・TK(毒性動態)・安全性薬理試験までを一括で設計・受託することができます。
FDA・EMA・PMDAなどの国際規制に対応したGLP試験体制を完備。ICHガイドラインに準拠した信頼性の高いデータを取得し、グローバルな申請を見据えた試験設計を提案します。
PXBマウスを用いたヒト外挿性の高い薬物動態・肝代謝評価と、LC-MS/MSによる高感度バイオアナリシスを提供。動態・肝毒性・安全性の統合評価体制で核酸医薬等の新モダリティにも対応します。
ヒト肝細胞を有するPXBマウス®を用いた薬物動態・肝代謝評価に対応。
ADMEや薬物相互作用においてヒト外挿性の極めて高いデータを取得でき、臨床試への移行をサポートします。
LC-MS/MSを活用した高感度なバイオアナリシスを提供。微量な血中濃度測定から、複雑な代謝物の同定、厳密な定量バリデーションまでを一貫対応します。
薬物動態・肝毒性・安全性の統合評価体制を構築し、核酸医薬等の新モダリティにも対応。肝代謝が課題となる化合物や臨床導出が控える案件でも、定量性と再現性に優れた信頼性の高いデータを提供。