BTK(Bruton's Tyrosine Kinase)は、B細胞受容体(BCR)シグナル伝達を担う重要なチロシンキナーゼであり、B細胞の活性化や増殖、生存に深く関与しています。BTK阻害薬は、このBTKの働きを阻害することでB細胞の増殖・生存シグナルを抑制する分子標的薬です。主に慢性リンパ性白血病、マントル細胞リンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症などのB細胞性悪性腫瘍を対象に使用されており、がん細胞に関わるシグナル伝達経路を標的とする治療法として発展してきました。BTK阻害薬は、現在では分子標的治療を代表する創薬クラスの一つとして位置付けられています。
イブルチニブ(Imbruvica)は、第一世代BTK阻害薬として広く知られる代表的な薬剤です。BTKのシステイン残基へ共有結合して不可逆的に阻害することで、B細胞受容体シグナル伝達を抑制します。BTK阻害薬の代表例として、B細胞性悪性腫瘍の治療に用いられています。
アカラブルチニブ(Calquence)は、第二世代BTK阻害薬として開発された薬剤です。BTKに対する選択性を高めることで、副作用の低減を目指した設計が特徴であり、第一世代のイブルチニブと比べてオフターゲット作用の抑制が期待されています。
ザヌブルチニブ(Brukinsa)は、第二世代BTK阻害薬として開発された薬剤です。高いBTK占有率と優れた選択性を特徴とし、標的阻害を維持しながらオフターゲット作用の低減を目指して設計されました。次世代BTK阻害薬として、有効性と安全性のさらなる向上が期待されています。
BTK阻害薬では、BTK C481S変異による結合性の低下や、PLCγ2変異などBTK下流シグナルの活性化による耐性が課題です。長期投与に伴う耐性獲得も報告されており、次世代BTK阻害薬の開発が進められています。耐性克服に向けては、耐性細胞株や患者由来モデルを用いた評価が重要です。
BTK阻害薬は、TEC、EGFR、ITKなどBTK以外のキナーゼにも作用する場合があり、オフターゲット作用が副作用につながる可能性があります。標的選択性を高めたBTK阻害薬の開発が進められており、創薬ではBTKに対する選択性を適切に評価することが重要です。
BTKは正常B細胞にも発現しているため、阻害によって免疫機能へ影響を及ぼす可能性があります。臨床では出血、感染症、心血管系の有害事象が課題であり、細胞株だけではヒト薬効を十分に予測できません。そのため、ヒト外挿性の高い病態モデルを用いた薬効・安全性評価が重要です。
BTK阻害薬の開発では、耐性獲得後の薬効を予測するための耐性モデルが重要です。BTK C481Sなどの耐性変異を導入した細胞株に加え、患者由来細胞やPDXモデルを組み合わせることで、次世代BTK阻害薬の比較評価や耐性克服戦略をより実臨床に近い条件で検証できます。
BTK阻害薬の評価では、Target Engagementによる標的結合の確認に加え、BTKシグナル抑制評価、バイオマーカー評価、薬効薬理試験を組み合わせることが重要です。標的への作用だけでなくオフターゲット作用も評価し、複数の評価系を組み合わせた総合的な評価戦略によって有効性と安全性を検証します。
PK評価では、血中曝露や組織分布を把握し、薬物が標的部位へ十分到達するかを確認します。さらにPK/PD評価と薬効評価を組み合わせることで、薬効不足の原因が薬物動態によるものか、薬効そのものによるものかを切り分け、開発を効率的に進めることが重要です。
BTK阻害薬では、出血リスク、心血管系安全性、免疫毒性を開発初期から評価することが重要です。hERG試験などの代表的な安全性評価に加え、長期投与を見据えた毒性評価を実施し、モダリティの特性に応じて必要な安全性試験を組み合わせる評価戦略が求められます。
BTK阻害薬の開発では、耐性機構、標的選択性、薬効・薬物動態・安全性を統合的に評価する非臨床試験が重要です。今後は次世代薬や新たなモダリティの開発が進む中、開発戦略に応じた評価系を提案・実施できるCROを選定することが、効率的な創薬成功につながります。
新薬開発において、非臨床試験の質と効率は、臨床成功率やコスト、スピードに直結します。特に近年では、「ヒト外挿性の高いデータ」「国際申請に通用する信頼性」「創薬初期での的確な絞り込み」といったニーズが高まり、CRO(医薬品開発受託機関)選びにも戦略性が求められるようになりました。
本記事では、非臨床の目的ごとにおすすめの3社を厳選して紹介していきます。